こんにちは!
臨床獣医師と研究者をしている前田真吾と申します。
僕は東京大学の附属動物医療センターで臨床獣医師として働きながら(実は東京大学の銀杏並木とどんぐりの木々をこえた先に、動物病院があるんです!)イヌとネコの診察・研究を通じて新たな治療法の開発に携わっています。
僕の主な専門領域は「泌尿器」で、イヌやネコの膀胱がんや前立腺がん(移行上皮癌)といった泌尿器腫瘍や慢性腎臓病の診察と研究を日夜おこなっています。
現在、以下の3つの研究プロジェクトが進行中です。
1.制御性T細胞のコントロールによるがん免疫療法の確立
がんの悪化には制御性T細胞という免疫を抑制する細胞が関与しています
これまでに「CCR4」という分子の働きを止めることで制御性T細胞をコントロールするがん免疫療法を確立しました ※東京大学動物医療センターで行ったイヌの移行上皮癌32頭、前立腺癌23頭の臨床試験では、従来の治療法と比べて生存期間の中央値が2~3倍延長するなどの効果を上げています(詳しくはコチラ)
現在は「制御性T細胞を標的としたがん免疫療法と放射線治療」を組み合わせることで、もっとたくさんのイヌやネコを救えるのではないかという仮説をもとに研究を進めています
2.移行上皮癌/前立腺癌の新規分子標的療法の確立
3.慢性腎臓病の進行メカニズムの解明と治療応用
イヌとネコの長寿化・高齢化に伴い、慢性腎臓病は年々増加しています
慢性腎臓病はさまざまな要因が複雑に絡み合って進行しますが、その中でも「糸球体障害(蛋白尿)」の発生メカニズムに注目して研究を進めています
ネコの「多発性嚢胞腎」と呼ばれる遺伝性腎疾患の発症メカニズムと治療法の開発も進めています
イヌとネコの慢性腎臓病に対する新しい治療薬の臨床試験を実施し、そこから得られた知見をヒトの慢性腎臓病患者さんへ応用することを目指しています
これらの研究はイヌ・ネコだけでなく、ヒトの病気のメカニズム解明や治療法の確率にもつながるものであり、獣医療・医療の未来を切り開く手助けとなることを目指して、日々研究をしています。
しかしながら、これらの研究には多額の研究費が必要です。
僕たちのラボでは、実験室での研究だけでなく、実際の臨床症例(病気になってしまったイヌとネコ)に対する臨床試験も実施しています。
そのため、実験試薬に加えて臨床試験で使用する薬剤費も含めると、年間で1500万円以上の研究費がかかっています。
現在、科研費(カケンヒ)という国からの競争的研究費(各研究プロジェクトの計画申請書を提出し、採択されれば提供を受けることができる研究資金)で研究を行っていますが、それだけでは十分な資金調達ができません。
また研究を「続けていく」ために重要なこととして、科研費などの競争的研究費では研究期間が3~5年と定められており、研究期間が終了すると研究費の提供は打ち切られてしまうということが大きな課題だと考えています。
つまり、日本の多くのラボが競争的研究費だけでは研究を持続的に進めていくのが難しいという状況です。
僕自身は、幸いなことにこれまでたくさんの研究費を科研費からいただいてきました。
現在も採択していただいているプロジェクトが進行中です。
でも、、、その科研費プロジェクトの研究期間が終了した後に、新たに申請したプロジェクトが不採択となってしまったら…。
その後1年間は研究費が枯渇してまったく研究が進められなくなってしまいます。
研究が進められなければ、論文発表もできません(そもそも論文として公開するにも数十万円のお金をジャーナルに支払う必要があります、、)。
そうなると、次の申請書に書くための予備データを出すための実験もできなくなるので、次年度も不採択となればまた資金不足で研究ができない、、、という負のスパイラルにはまってしまいます。
「不採択となるような研究プロジェクトを申請した自分が悪いだろ?」と言われてしまえばその通りですし、そうならないようにもちろん毎回申請書は命を削って書いているのですが、毎回100発100中で申請書が通ることなんてありえません(僕は10回申請して2,3回採択されるくらいです)。
個人的には現在の科研費システムは非常に素晴らしいと思っていますし好きなのですが、研究費が一度途切れてしまったら「一発アウト!」となってしまうのは問題だと思っています。
「大学の主な研究費は科研費である」という当たり前・常識は崩せないのか?
「競争的研究費」以外に研究資金を得る道はないのか?
そんなことをいつも考えています。
可能性はまだまだあるはずです。
海外に目を向けると、研究費の多くが「寄付」で成り立っていることに気づかされます。
少し前にお知り合いになったペンシルバニア大学の米国獣医眼科専門医であるMiyadera Keiko先生は、イヌの遺伝性網膜疾患を研究されているのですが、研究施設の維持に年間数億円!もの資金がかかるとのことで、そのお金の大部分はご寄付でまかなわれているとおっしゃられていました。
現在は柴犬の遺伝的な緑内障に関する研究の寄付プロジェクトが進行中のようです!
このように、応援してくださる方々からの支援によって研究を推進するという選択肢が日本でも広がるといいなあと思うようになりました。
「どうぶつたちを助けたい!」という想いで日々研究・診療をしていますが、臨床の現場ではどうしても救えない命もたくさんあり、常に悔しい想いと葛藤を抱えています。
でも、あるとき飼い主さんから「先生、気を張り詰めすぎないで。私たち飼い主にも手伝えることがあれば言ってくださいね。」というお言葉をいただいて、ハッとしました。
研究や診察は一人でやっているわけではない。むしろ、一人じゃなにもできない。
いろんな人たちと一緒に進めていくものなんだ、と。
そこでこの度、皆さまにお力添えいただきたく、この寄付プロジェクトを立ち上げさせていただきました。
ご寄付いただいたお金は、現在進行している3つの研究プロジェクトで使用する研究機器、実験試薬、臨床試験の薬剤費として大切に使わせていただきます。
皆さまのあたたかいご支援が必要です。
研究の進捗状況や成果については、このMEMOブログやSNSを通じて定期的にお知らせいたします。
寄付をご検討いただける方は、以下のフォームから必要事項を記入してお申し込みをお願いいたします。
お申込み内容を確認した後、前田からご案内メールをお送りいたします。
【重要事項】
個人名義・法人名義のどちらのご支援でも可能です。
東京大学へのご寄付には税法上の優遇措置が適用されます。別途お送りする領収書を控除証明書として確定申告書に添付し、所轄税務署へご提出ください。 詳細につきましてはコチラをご参照ください。
何卒ご支援のほど、よろしくお願いいたします。
東京大学 獣医臨床病理学研究室
前田真吾
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