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執筆者の写真マエダシンゴ

世界獣医がん学会サイコーでした!

2024.3.25


2024年3月21日~24日の4日間、世界獣医がん学会(World Veterinary Cancer Congress:WVCC2024 Tokyo)に参加してきました!





世界獣医がん学会(WVCC)は、もともと米国獣医がん学会(Veterinary Cancer Society:VCS)が主催するアメリカ各地で毎年開催されている学術集会の全世界版で、4~5年に1回世界各国のどこかで開催される世界大会です。



実はWVCCはおろか、VCSにもこれまで参加したことがなかったので、今回初参加でしたが、率直に言って「サイコー」でした!



VCSやWVCCの特徴として、比較的大きな学会なのですが会場はワンフロアしかないということがあります。なので、参加者全員が一堂に会して各発表を聞き、ディスカッションをするという素敵なスタイル。





今回も会場であるニューオータニ東京で1番大きい「芙蓉の間」という部屋に、1000人近くの国内外の獣医師が集結していて、本当に大盛況でした!





そして世界各国のみなさんの発表レベルが非常に高い。学びと刺激を受けまくりでした。

何より英語のレベルもめちゃくちゃ高い!(当然っちゃ当然なんですが、、笑)


初日にネイティブが英語でディスカッションしているスピード感に圧倒されて、正直、ビビりました笑。でも、2日目以降、慣れてきたのか少しずつ聴きとれるようになってきて、講演や研究発表を楽しむことができました。




この学会で研究発表を聴いて感じたのは、やはり北米の研究力の強さです。


大規模な研究は正直もうかなわないなあというのが正直なところです。2日目3日目の研究発表でも、症例数が1000とか2000とかの話がゴロゴロでてきていて、さらにそのビッグデータをAIを駆使して解析し、最適解を出す、というスキームが今の北米の獣医学研究で確立されており、それが主流になってきているように感じました。





当然、かかっている研究費も膨大で、おそらくですが日本の研究費の10〜100倍はかかっているんだろうなあと。

アメリカでは獣医学研究者と医学研究者の連携が非常にシームレスに行われており、さらに製薬企業からの支援も大きいようです。

また、寄付の文化が根付いており、アカデミア・企業・個人がいい感じに協力し合って、大きなプロジェクトをみんなで進めているといった様子でした。



では、日本の獣医学研究者はどうしたらいいのでしょう?




この点を、仲良くさせていただいている山口大学の水野先生とも議論しましたが、なかなか一朝一夕で解決する問題ではないです。


でも、議論の中で水野先生がおっしゃっていたのは、


「数や量で勝負しても北米には勝てない。何かちがうやり方を見つけないといけない」


ということでした。




これには僕も完全に同意で、何かひとひねりというか、ニッチなところを突き詰めていくといった研究がいいんだろうなあということをぼんやり考えています。


幸い、僕自身はそういったニッチというかマニアックなことをつきつめるというやり方のほうが性に合っていて、今まさにそんな感じなんだと思います。



なので、今やっていることをコツコツとやり続けて行こうと改めて思いました。





WVCCの3日目は「がん免疫療法」がテーマの一日でした。



この日はなんと言っても制御性T細胞(Treg)の発見者であり、世界的な免疫学者である坂口志文(さかぐち しもん)先生の基調講演が一番の目玉。


僕自身、Tregの研究をしているはしくれとして、獣医の学会で坂口先生のご講演が聴けるということに非常に興奮しました。



坂口先生のお話は、Treg発見の歴史からはじまり、Tregを操作することでいろんな病気をコントロールすることができる可能性、Tregを操作することで起こる副作用、そして最後に現在注目しているTregを操作するのに最適な標的分子まで、本当に壮大かつ緻密なお話を拝聴することができました。




ちょうどVIP(Veterinary Immunology for Practitioners)という雑誌の連載を僕が担当しており、坂口先生のTreg論文を読み漁っていたので、かなりハイレベルな話をされていたのですがほぼすべての内容を理解できたことはとても嬉しかったです。




質疑応答の時間にはドキドキしながら坂口先生に質問することもできました。


緊張でおそらく声が少し震えていましたが、坂口先生と対話することができてとても思い出深い経験ができました。そもそも坂口先生のお名前が文(学問)を志すと書いて「志文」なんてカッコよすぎませんか、、!?






最終日の4日目は、ついに自分の発表の出番でした。



僕とKnapp先生(パデュー大学の教授で犬の移行上皮癌研究の第一人者の先生)のセッションは、この学会の1番最後のプログラム。


午後からの出番だったので、午前中は最終リハーサルをするためにホテルの部屋にこもってプレゼンの練習をしていました(午前中の講演もめちゃくちゃ聴きたかったのですが泣く泣く断念、オンライン配信で聴こうと思います)。




そしていよいよ本番!


心臓がドックン、ドックンと、脈打っているのを感じます。



首と肩をぐるぐると回して、軽くストレッチをしてみました。

そうすると、なんだかちょっとリラックスしてきて、楽しくなってきます。



「こんな僕なんかの発表を聴きに、世界中の先生がこの会場に集まってきてくれている」




そう思うと、なんだか緊張よりも、嬉しさのほうがこみ上げてきました。

そして、最終的には比較的リラックスして、登壇することができました。




壇上に立つと、聴衆の先生方が一望できました。

こちらを見てくれている先生方のお顔をゆっくり見渡しました。

知り合いの先生の顔もチラホラ見つけることができて、また嬉しくなりました。




座長の小林先生が僕の紹介をしてくれた後、ついに僕の講演が始まりました。



とにかく一生懸命、楽しんで話すことを心がけました。


途中、何度かつっかえることがありましたが、これまで自分が取り組んできたこと、それを会場の先生方に少しでも伝えよう。その一心で話しました。



今回発表した研究のウラ話もしたのですが、研究に対する想いをそこに込めました。


夢中で話していたら、あっという間に40分が過ぎ、気づけば自分のプレゼンは終わっていました。無我夢中で話しました。


たぶん、パッションは伝わったんじゃないかと思います。







プレゼン中にいくつかネタ(笑ってもらいたいところ)を仕込んでいたのですが、おそらく半分くらいはウケていた(リアクションがあった)ので、ホッとしました笑。


ただ、総合討論の時に僕が日本語で話して通訳の方に訳していただくということになっていたので、「すみません、僕は英語がそこまで得意ではないので、オオタニサンスタイルで行こうと思います」と冗談を言ってみたのですが、それはめちゃくちゃスベりました、、笑


しかも僕が日本語で言った「オオタニサン」のくだりを、通訳の方が英語に訳して繰り返されていたので、二重ではずかしめを受けました笑。


たぶんあそこで僕が「そこはスベったので訳さないでいいです」と機転を利かせることができていたら、たぶん爆笑になった流れだったのですが、そこまでのユーモアセンスは僕にはありませんでした、、





そんなどうでもいい話は置いておいて、、


僕のプレゼンが終わった後は、Knapp先生の基調講演。さすが「TCCクイーン」と呼ばれる移行上皮癌研究のレジェンドの先生で、これまでの研究の歴史から最新のデータ、そしてこれからの展望までを網羅した本当に素晴らしいプレゼンでした。



そして総合討論では、あのKnapp先生が自分の隣にいて、一緒にディスカッションするという、本当に夢のような時間を過ごすことができました。





今回の学会では本当に貴重な経験をさせてもらいました。



冒頭に書いた通り、世界獣医がん学会は4、5年に1回世界各国のどこかで開催する学術集会なので、次に日本で開催されるのはおそらく数十年後。もしかしたら50年後とかかもしれません。



今回、日本で開催されるタイミングで、臨床試験の結果を出せていたのは本当にラッキーでした。

もともと今回の世界獣医がん学会は2020年に日本で開催される予定だったのですが、新型コロナの影響で急遽中止に。


当時はモガムリズマブの臨床試験が終わって、ラパチニブの臨床試験をやっている真っ最中でした。

2020年の時はモガムリズマブの臨床試験の結果を研究部門で口頭発表の予定だったのに、その4年後にまさか自分がキーノートスピーカーになるなんて、、人生何が起こるかわからないものです。




今回キーノートスピーカーに推薦していただいた先生方には本当に感謝しています。

また学会運営の方々や、通訳の久保田先生、モデレーターをしてくださった小林哲也先生、大会長の石田卓夫先生、そしてご参加くださった先生方、みなさんに心からお礼を申し上げたいです。




本当にありがとうございました!


サイコーの学会でした!!!




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