2019.6.22
「ノラ猫あがりのスターたち」という本を読みました。
著者は20年近く不遇な状況にある犬・猫たちの保護/譲渡活動をされてきた女性。
ふとしたご縁でお話させていただくようになり、この本も拝読させていただきました。
この本は著者のこれまでの体験を綴ったノンフィクションです。この本の中には彼女の信念と情熱、純粋さ、そして犬や猫たちへの深い愛情がすべて詰め込まれており、それらがこの本を通してあふれんばかりに伝わってきました。
全部で15のストーリーが綴られているのですが、そこに登場するねこたちの、しなやかにたくましく生きる姿に感動します。また、各章の主人公のねこたちの実際の写真が巻末に載っており、それがまた秀逸です。巻末の写真を見ながら各章を読むことで、よりリアルにねこたちの情景が浮かんできます。
当たり前ですが、どんなねこにも(ノラねこにだって!)それぞれのストーリーがあり、みんなが個性的で輝いている。そんなことを再認識しました。
この本の中には思わず目をそむけたくなるようなノラねこたちの厳しい現実も書かれており、保護活動が一筋縄ではいかないことを教えてくれます。そんな重い現実に立ち向かい、悪戦苦闘しながら、著者は自分の信念に基づいて行動し続けています。そんな著者とねこたちの一期一会のストーリーはクスリと笑って、ほろりと泣ける、上質な短編映画を観たような心地よい爽快感を残してくれるとてもすばらしい内容でした。
15のストーリーはどれもが感動的ですばらしいのですが、その中で僕が特に感銘を受けたストーリーを3つ選んでみました。
ほたる
子猫のときに保護された「ほたる」は、生まれつき全盲というハンディキャップを持っているねこです。
保護されたときは、受け入れてくれる飼い主さんは現れるのか?と著者も不安になったと正直な心情を告白しています。
しかし何事もやってみなければわからない。やる前からアレコレ考えても何も始まらない。
だれでもスターになる素質がある!
そう著者は確信し、ほたるのありのままを受け入れました。
肝心のほたる本人はというと、眼が見えないことなどまったく意に介せず、食べたいときに食べ、遊びたいときに遊び、寝たいときに寝る、純粋に「今」を全身全霊で楽しんで生きていて、そんなほたるに感銘を受けました。そして「かわいそう」などというのは人間の勝手な思い込みであることに気づかされました。
そんな天真爛漫なほたるは、クリスマスに新しい家族に迎え入れられ、楽しく猫生きを謳歌しているとのことです。
トロンという名の実り
この章では、著者の17年(!)にわたる保護/譲渡活動の軌跡が描かれています。
この章の主人公である「トロン」の譲渡を介して、著者は
”17年に及ぶ保護譲渡活動の過去、現在、未来の3つの点が一本の線で結ばれるような感覚を覚えた”と記しています。
これは、前回のブログ「点と線」で書いたように、僕も研究を通して全く同じ感覚を体感したことがあったので、とても共感できました。
まさにスティーブ・ジョブズの言っていた ”Connecting the dots” のことだと思います。志高く、粘り強く、自分の信念に基づいて行動し続ける。すると自然と結果がついてくる。そんな真理を教えてくれるストーリーでした。
章の最後の一節も本当にそうだと思いますし、僕もそんな人間になりたいと強く思いました。
片目のシンデレラ
この本の表紙にもなっている、腫瘍により片目を失ったねこ「ローズ」の物語。
腫瘍の切除のために、眼球摘出を決断した著者。しかし、手術が終わった後何度も”これでよかったのか?”と自問自答します。”ローズは目を取ってまで生きたかったのだろうか?”
しかし、ローズは片目を見開き著者をじっと見つめます。そして著者は気づきます。
”ローズは片目を失った憐れな猫ではなく、病気に打ち勝った強い猫”だと。
何事も見る角度によって変わってくる。この表現に僕はしびれました。
まさにその通りだな、と。
逆境を嘆きつらいと捉えるか、それをチャンスと捉えるかはその人次第。
僕は常に人生を楽しみながら生きていきたい。それが逆境だとしても。今日が人生最期の日になるかもしれないから。
そんなことを読みながら考えさせられたお話でした。
その他にもすばらしいストーリー、すばらしい人たち、そしてすばらしいねこたちが随所にちりばめられています。
僕も自分の信じる道を突き進もう、そんな前向きな気持ちにさせてくれる本です。
自分のやりたいことをやりきるってこういうことなんだと思います。
保護/譲渡活動に興味がある方や犬・猫が好きな方だけでなく、自分のやりたいことってなんだろうと迷っている方、夢と現実に板挟みになっているような方にもオススメです。
きっとこの本が背中を押してくれるはずです。
最後に、今も暗がりの中に生きているノラねこたちにメッセージ。
ノラねこたちよ、ツッパってないで、田辺さんの腕の中においで。
きっと暖かく迎えてくれる家族にめぐり合わせてくれる。
こわくないよ。
Welcome to the Heart-warming World!!
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